建設業界は高卒でも働ける?目指せる職種や転職事例をご紹介
建設業界への高卒・未経験者の転職は可能であり、特に若年層の不足から学歴や経験を問わず積極的に採用されています。建設業界の高齢化や人材不足が背景にあり、特に工業高校卒業生は即戦力として歓迎されています。
建設業界の高卒就職者は離職率が高く、特に体力的な負担や同年代の少なさが問題とされていますが、オフィスワークが中心の続けやすい職種もあるため、長期間に渡って安定的に働くことも可能です。
なかでも設計士や施工管理士、CIMオペレーターなどの職種は高卒からでも目指せる職種です。実際に高卒者がこれらの職種で成功を収めた事例もあります。
高卒後、建設業界に進んだ男性は、施工管理職を目指し、2級土木施工管理技士の資格を取得するため、4年半の実務経験を積みました。ある女性は事務職から建築資材の卸売会社に就職し、営業職を経て現在は建築士として活躍しています。
目次
高卒でも建設業界への就職は可能?
茨城で転職をお考えの方の中には、高卒で建設業界を目指している方も多いことと思います。高卒では就職は厳しい、と言われる業界もありますが、建設業界はどうなのでしょうか。高卒・未経験からの建設業界への転職について、実情を見てみましょう。
◇未経験でも転職できる
昨今の建設業界は学歴・経験にとらわれず、積極的な採用を行っています。大きな理由のひとつが、建設業界の人材不足です。設業界の高齢化は深刻であり、55歳以上の労働者が全体の約34%を占めるにもかかわらず、15歳〜34歳の労働者は約19%しかいません。
この傾向は全業界でみられますが、特に建設業界はそれが強く、体力仕事が多いことからも先行きが憂慮されています。特に若年層が不足していることから、高卒・未経験でも高確率で転職の成功が見込めます。
◇特に工業高校卒業生は歓迎
高卒・未経験者の中でも、実用性が高い学習を積んでいる工業高校卒業生は、特に建設業採用に好まれる傾向があります。
厚生労働省によれば、2024年3月卒業予定の中学生生および高校生に対する求人倍率は3.5倍となっています。中でも工業高校卒業生は需要が高く、全国工業高等学校校長協会の「令和4年卒業者等に関わる状況調査」によれば、2022年の求人倍率は17.2倍にも上りました。
実際に、工業高校において進路指導に関わる方からは、「10年程で求人社数が3倍近くになった」「就職を望む学生1人に対して10~15もの企業が集まる」という声も上がっています。
工業高校卒業生の人気の理由としては、二級土木・建築施工管理技士補といった資格を取得済みであること、授業において溶接やCADの経験があることなど、即戦力と成りうる実力の高さが挙げられます。
若い人にとって建設業界は働きにくい?
建設業界は若年層の不足から、学歴・経験にとらわれず積極的な採用を行っています。では、建設業界において若年層が不足しているのは、一体なぜなのでしょうか。若い人にとって建設業界は働きやすいのかどうか、厚生労働省などのデータを見てみましょう。
◇建設業界における高卒就職者の離職率
建築業界における高卒就職者の離職率は、全業界平均と比べ高めの傾向にあります。厚生労働省によれば、高卒者の就職後3年以内の離職率は2020年3月卒で37.0%、2021年3月卒で38.4%でした。
これを建設業界にのみ絞ると、2020年3月卒で42.4%、2021年3月卒で43.2%となり、全業界平均より高めの傾向が見て取れます。離職率からは、若い人にとって建設業界は働きにくい、という現状が推測できます。
◇若年の従業員が早期離職する主な理由
建設業界の若年層が早期離職するのは、同年代や休みの少なさ、体力的な問題などが理由だと考えられています。
厚生労働省の「建設業における雇用管理現状把握実態調査報告書」によれば、若年層が定着していない企業の42.0%が体力的な厳しさを理由に、29.9%が同年代の先輩の少なさを理由として挙げました。
また、同じく厚生労働の「建設労働者を取り巻く状況について」によれば、若年層が定着しない理由として、23.5%の企業と8.4%の離職者が休みの取りにくさを理由に挙げています。
これらのデータからは、やはり、若い人にとって建設業界は働きにくい、という現状が推測できます。
では、若い人に建設業界はおすすめできないのか、と言うと、決してそうではありません。政府は建設労働法に基づいて「建設雇用改善計画」を立てており、この中では就労の安定化や女性が就労しやすい環境の整備、建設キャリアアップシステムの推進、働き方改革の推進といった言及がなされています。
建設業界の雇用環境は、若い人にとってもよいものに変わっていく可能性が高いでしょう。また、オフィスワークが中心の続けやすい職種もあり、それを選べば長期間に渡って安定的に働ける確率が高まります。
高卒の方におすすめ!建設業界の続けやすい職種
建設業界は、若年層にとっても就業環境の改善が見込める業界です。特に、オフィスワーク中心の職種を選べば、体力的な問題に左右されない安定的な就業が期待できます。
では、そのような続けやすい職種には、どのようなものがあるのでしょうか。オフィスワーク中心の職種、高卒からその職種に就く方法を見てみましょう。
◇設計士
設計士は、建物の図面作成をメインに、関連する行政手続きや施工管理などを行う仕事です。高卒者であっても、建築科・土木科卒なら3年以上、普通科なら7年以上の実務経験を積めば、二級建築士・木造の受験資格が得られます。
建設関係の会社に転職した上で、物理や化学など、必要な学習に力を入れるのがいいでしょう。
◇施工管理士
施工管理士は、工事の施工ペースや安全を監督する仕事です。高卒でも受験できる上、かつてあった学歴による受験資格の差も撤廃されました。
現在は、受験年度末時点で19歳以上であれば1級、17歳以上であれば2級の一次検定が受けられ、その後3〜5年の実務経験を積むと、二次検定に進めるようになっています。
◇CIMオペレーター
CIMオペレーターは、パソコンを利用して3D模型のデータを作り、設計や管理を行う仕事です。CIMオペレーターは特に資格がないため、関連知識を得れば高卒からでも問題なく目指せます。
CADオペレーターとしての実務経験、関連する民間資格などがあれば、有利に進められるでしょう。
高卒から建設業界に就職した事例
建設業界では実際に、高卒から設計士や施工管理士、CIMオペレーターになった方も少なくありません。参考として、高卒から建設業界に就職した実例、理由や経緯について見てみましょう。
◇知識ゼロから施工管理へ
ある男性は学生の頃から建設業界に興味を持っており、高卒後すぐに、地元の歴史ある会社に就職しました。施工管理業で入社したものの、本格的に業務に取り組むにはまず、2級土木施工管理技士の資格を取らねばなりません。
当時はまだ学歴によって必要な実務経験期間に差があり、高卒者は専門学校卒者よりも2年多く、4年半の実務経験を積む必要がありました。彼は即戦力にはなれないことを気にかけていましたが、周囲の先輩社員は優しく、実務を分かりやすく教えるのはもちろん、試験のアドバイスもくれたと言います。
結果、彼は筆記試験に無事に合格し、残る実地試験に向けて、実務に励みながら前進しています。
◇異業種の事務職から建築士へ
ある女性は、幼い頃から建築士の仕事に興味を抱いていましたが、親の反対にあって諦め、商業高校から事務職へと進みました。ところが、最初の職場は人間関係が厳しく、就職後1年程で身体を壊してしまいます。
高校時代に取得した資格を元に転職活動を進める中で、たまたま縁があったのが建築資材の卸売会社でした。転職先は人間関係も良く、仕事に打ち込む内に、彼女は再び建築士の仕事に興味を持ち始めます。
その会社で営業として7年の実務経験を積んだ後、夜間学校に通って学び、最終的に建築士の資格を取得しました。現在は、さらに他の会社に転職し、念願の建築士として仕事を満喫しています。
建設業界への転職は、高卒や未経験者でも十分に可能です。特に近年、建設業界では若年層の労働力不足が深刻であり、そのため学歴や経験にこだわらず積極的に新しい人材を採用しています。
建設業界全体では高齢化が進んでおり、企業は新たな人材を求めているのです。こうした背景から、学歴に関係なく、即戦力として働ける人材が必要とされており、特に工業高校卒業生はその実践的な知識や技術が求められ、即戦力として歓迎されています。
ただし、建設業界での高卒就職者に関しては、離職率が比較的高い傾向にあります。特に体力的な負担や、同年代の同僚が少ないことが原因で、若い世代が早期に離職するケースも少なくありません。このような厳しい労働環境が、離職率の高さにつながっています。
しかし、政府もこの問題に取り組んでおり、労働環境の改善に向けた施策が進められており、建設業界の働き方改革や、働きやすい職場環境を整えるための取り組みが強化されています。
また、建設業界内でも体力的な負担が少ないオフィスワーク中心の職種に就くことで、安定して長期間働ける可能性が高くなります。例えば、設計士や施工管理士、CIMオペレーターなどの職種は、実務経験を積みながらキャリアを築いていくことができ、高卒でも目指せる職種です。
実際に、これらの職種に高卒から転職し、成功を収めた人々の事例も多数存在しています。こうした職種では、体力的な負担が少なく、若い人でも安定してキャリアを積み上げることが可能です。