建築業でテレワークは難しい?向いている職種を解説
建設業界ではテレワークが難しい職種も多いですが、コロナ禍を経てハイブリッド型勤務が増加しています。建築士や施工管理職はデジタルツールを活用し、リモート対応が可能です。情報共有やコミュニケーションツールを活用することで、業務の効率化が進んでいます。
目次
建設業界におけるテレワークの割合は?
コロナ禍を経て、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッド型の働き方が増えています。特に、1週間あたりの平均テレワーク日数が減少し、2.3日に落ち着く傾向があります。職種別には、建設業でテレワーク実施率が低く、業界特有の課題が浮き彫りになっています。
◇コロナ禍を経てハイブリッド型が増加傾向
コロナ禍のあと全国的にテレワークの実施率は減少しましたが、それでもコロナ前と比較すると依然として高い水準を保っています。
1週間あたりの平均テレワーク日数は、令和2年度から令和3年度にかけて増加しましたが、令和4年度以降は減少し、現在は平均2.3日/週程度に落ち着いています。この変化は、完全テレワークから出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークへの移行が進んだ結果と言えるでしょう。
◇建築業のテレワークは低水準
テレワークの実施率は職種によって大きく異なります。特に、雇用型テレワーカーの割合は多くの職種で減少していますが、研究職では昨年度から約3ポイント減少しました。一方、フリーランスや自営型テレワーカーでは、「事務職」「販売」「営業」といった職種で、昨年度から約5ポイント以上の増加が見られました。
建設業では、テレワークが難しいとされ、2020年11月の東京商工会議所の調査によると、テレワーク実施率が41.0%と業界内で最も低い結果となりました。また、「一時期実施していたが、現在は取りやめた」という回答が32.4%を占め、テレワーク導入の課題が浮き彫りになっています。
建築業でテレワークが難しい理由
建設業界では、業務が個人に依存する「属人化」した業務が多く、テレワーク導入の障害となっています。テレワークを実現するためには、情報共有を進め、業務を誰でも実施できる体制に整えることが不可欠です。
◇属人化している業務が多い
建設業界では、業務や情報が特定の個人に依存している「属人化」が多く、これがテレワーク導入の大きな障害となっています。この問題を解決するためには、業務や情報の共有を進め、誰でも業務を遂行できる体制を整えることが重要です。
特にアナログな働き方が根強い企業では、業務のデジタル化や情報共有の仕組みを整備することが急務です。
◇スムーズな連携が必要
建設業では、発注者、受注者、現場と事務所など、さまざまな関係者が連携して業務を進めています。しかし、テレワークでは対面でのコミュニケーションが減少するため、連携に支障をきたす可能性があります。
これを解決するためには、Web会議やチャットツールなどを活用し、リアルタイムで情報共有できる体制を整えることが求められます。報告や相談がしやすい環境を整えることで、連携不足を防ぎ、業務をスムーズに進めることができます。
◇現場作業が必要不可欠
建設業界では、現場作業が必須です。建築物の施工や修理、設備の設置などの多くの業務は、現場で直接行わなければなりません。例えば、建物の構造物の組み立てや配管工事、電気設備の配線作業などは、リモートでは対応できません。
また、現場監督やプロジェクトマネージャーは、現場の進捗状況を確認し、問題が発生した場合には迅速に対応することが求められます。この現地での確認作業は、建設プロジェクトの品質や安全を確保するために非常に重要です。
建築業界でテレワークが可能な職種は?
建築士や施工管理職の業務は、テレワークで対応できる部分と現場で直接行う必要がある部分に分かれています。特に、デジタルツールの活用が進んでおり、効率的な業務運営が可能となっています。
◇建築士
建築士がテレワークで行う業務は、主に設計段階の作業です。建築士はCADソフトを使って設計図を作成するため、この作業は高度にデジタル化されています。パソコンやインターネット環境があれば、自宅や他の場所でも作業を進めることができます。
また、クラウド対応の設計ソフトやプロジェクト管理ツールを活用することで、オンライン上で図面やモデルの共有や編集ができ、タスクやスケジュールの管理も可能です。このようなデジタル化により、設計変更が迅速に反映され、対面での会議を減らしつつ効率的にプロジェクトを進めることができます。
◇施工管理職
施工管理職は現場の進捗状況を監督し、品質や安全の管理を行う重要な役割を担っています。近年、デジタルツールの導入が進み、現場の状況を遠隔でモニタリングすることができるようになりました。
例えば、クラウド管理を導入することで、従業員名簿や図面などの資料を一元管理し、現場から簡単に確認や共有ができるようになります。これにより、資料保管コストやメール連絡の手間を削減することができます。
また、工事写真の整理が効率化されるアプリも登場しており、現場監督の事務作業の負担が大幅に軽減されています。さらに、外注先との打ち合わせもテレワークを活用することで、対面よりも効率的に進めることが可能となります。
建設業界におけるテレワークの体験談
建設業界では、テレワークを活用するために情報共有やコミュニケーション手段を工夫しています。特に、現場の進捗状況を効率的に把握し、迅速に対応するための工夫が求められています。
◇情報共有はリモートで行う
リモートで施工管理を行う際に重要なのは「工事情報の共有方法」です。質問対応の頻度を減らすことで、テレワークの利点を最大限に活用できると考えたため、情報共有の方法を徹底的に見直しました。土木工事は建築工事よりも人員が少なく、情報共有の難易度が比較的低かったため、工事情報を効率的に伝える方法が求められました。
具体的には、工事の概要や図面情報、位置図などをPDF化し、スマートフォンで閲覧できる形に整えました。また、クラウドサービスを活用し、工程や図面の変更などの更新情報を日付ごとにフォルダ化して共有することで、最新情報を迅速に共有できる体制を整えました。
◇テレビ電話で現場に対応
テレビ電話は、現場で職人が言葉だけで伝えることが難しい内容も、実際に見せてもらうことで理解が深まります。画面共有をしながら図面を確認しつつ指示を出すことができるため、回答までの時間を大幅に短縮できます。
さらに、発注者との立会では、発注者がリモートで参加し、自分が現場に出向いて画面を通じて立会を行うことで、立会の待機時間も削減できました。このような活用により、現場作業とリモートワークの両立が可能になります。
◇CADオペレーターで在宅勤務
CADオペレーターは、在宅勤務が十分に可能な職種であり、実際に多くのオペレーターが自宅で働いています。自宅のパソコンにCADソフトをインストールし、会社との連絡手段が整っていれば、リモートで業務をこなすことができます。
在宅勤務の一日の流れは、朝6時に起床し家事をこなし、9時30分から業務を開始します。業務開始前には必ず上司に報告をし、昼休憩を45分間取った後、16時に業務終了報告をして仕事を終えます。
在宅勤務で最も気を付けているのは、離れた場所でもズレなくスムーズにコミュニケーションを取ることです。必要なやり取りを最小限に抑え、効率的な仕事の進行を意識しています。
建設業界におけるテレワークの実施率は低いですが、コロナ禍を経てハイブリッド型の働き方が増加しています。現在、1週間あたりの平均テレワーク日数は約2.3日に減少していますが、完全テレワークからハイブリッドワークに移行したため、テレワークの実施率は依然として高い水準を保っています。特に建設業界では、業務が個人に依存する「属人化」が多く、情報共有の遅れや現場作業の不可欠さからテレワーク導入が難しいとされています。
建設業界でテレワークが可能な職種には、建築士や施工管理職があり、特に設計業務や進捗管理はデジタルツールを活用することでリモート対応が可能です。CADソフトやクラウドサービスを活用し、設計変更や工程管理が効率的に進められます。また、施工管理職は、クラウド管理を通じて現場の情報を遠隔でモニタリングでき、作業負担を軽減できます。
テレワークの運用では、情報共有の効率化やリアルタイムでのコミュニケーションが重要です。例えば、工事情報をPDF化しスマートフォンで閲覧可能にしたり、テレビ電話や画面共有を活用して現場対応を迅速化したりすることで、テレワークと現場作業の両立が可能となっています。また、CADオペレーターは在宅勤務が可能で、効率的な業務運営を維持しています。
これらの取り組みによって、建設業界でもテレワークが進展しており、業務効率化が期待されています。