新3Kとは?建設業の深刻な人材不足を解決する手段
建設業界は少子高齢化や過酷な労働環境により深刻な人材不足に直面しています。「3K」(きつい、汚い、危険)や「6K」(3Kに加え帰れない、厳しい、給料が安い)というイメージが若者に敬遠され、業界全体の高齢化も進行中です。
これに対抗するため、建設業界では「新3K」(給料がよい、休暇が取れる、希望がもてる)を目指し、業務効率化や働き方改革を進めています。AIやVR技術を使った教育や柔軟な働き方の推進、女性の働きやすい環境整備も行われ、次世代の担い手確保に努めています。
目次
建設業は深刻な人材不足
建設業界は深刻な人材不足に直面しています。少子高齢化や若年層の業界離れ、過酷な労働環境が原因で、現場の人手が不足しており、プロジェクトの遅延やコスト増加が頻発しています。
さらに、新しい技術の導入や安全対策の強化が求められる中で、専門知識や技能を持つ人材の確保が急務です。業界全体での労働環境の改善や、教育・研修の充実が必要とされており、これにより将来の建設業の持続可能な発展が期待されています。
人材不足の主な原因は以下の通りです。
◇若者からの人気が低い
建設業界では、1999年をピークに許可業者数と就業人口が減少し続けています。ピーク時から約20万社の建設会社が減少し、2011年の東日本大震災や東京オリンピックによる一時的な需要増加を経ても、長期的なダウントレンドは止まりません。
また、業界全体の高齢化が進み、新規学卒者の参入も1999年から2009年で半減しており、現在でもその回復は見られない状況です。業界に根強く残る「3K」(きつい、汚い、危険)のイメージが若者に敬遠され、若手人材の確保が一層難しくなっているのが現状です。
◇給与が低く休暇が取りづらい
建設業界では、給与水準と休日の日数が全業種の平均と比べて低いことが、人手不足の要因となっています。多くの就業者が日当制で働いており、雨天中止などで収入が不安定になることが少なくありません。
さらに、土日祝日にも工事が行われることが多く、安定した休みが取りづらい環境です。このような厳しい労働環境や「3K」のイメージが広まり、若者を中心に業界離れが進んでいます。
◇3Kに対するイメージ
建設業界が抱える人手不足の一因として、親世代が持つ「3K」のイメージが挙げられます。高度経済成長期からバブル期にかけて形成された「きつい、汚い、危険」のイメージが根強く残り、親たちは子どもをこの業界に入れたくないと考えています。
特に建設業界に無縁な親ほど、その傾向が顕著であり、労働環境が改善されている現状を知らずに、昔の偏見で建設業界を避けるように子どもに勧めてしまうことが問題となっています。このため、若手の人材がますます業界に流れ込まない状況が続いています。
建設業の3K、6Kとは?
画像出典:フォトAC
建設業は俗に「3K」「6K」といわれることがあります。どちらも過酷な労働環境や、賃金の低さ、規則の厳しさ、教育不足があらわされる言葉です。これらの要素が業界の人材不足や離職率の高さに影響を与えています。
◇3Kとは?
3K労働とは、「きつい、汚い、危険」という3つの頭文字「K」から作られた言葉で、主に労働条件が厳しい職業を指します。若い労働者が敬遠しがちなこれらの仕事は、過酷な作業環境や安全面でのリスクが高いことが特徴です。
こうした職場は働きやすいとは言えず、労働力の確保が難しいため、外国人労働者が多く就労しているケースもあります。
◇6Kとは?
6Kとは、従来の3K「きつい、汚い、危険」に新たに「帰れない、厳しい、給料が安い」を加えた、負担の大きい仕事を指す言葉です。
6Kの仕事には、土木・建築作業員、清掃員、看護師、介護士などが代表的です。これらの職種は、体力的に厳しいだけでなく、精神的にも大きな負担があり、さらに給料や休日といった待遇面でも厳しい状況が多いのが特徴です。
新3Kとは?
新3Kとは「給料がよい」「休暇が取れる」「希望がもてる」を意味し、建設業界が従来の「きつい」「汚い」「危険」という3Kのイメージを払拭するために取り組んでいる新たな指標です。
これまで建設業界は長時間労働や少ない休暇、労働者の高齢化、人手不足などが課題でしたが、新3Kの導入によって、より魅力的で働きやすい現場づくりを目指し、多様な人材を呼び込む努力が進められています。
◇新3Kの定義
・給料
給与面では、「労務費見積もり尊重宣言」促進モデル工事が進められ、下請け企業の労務費見積もりを尊重する企業には総合評価を優位にする仕組みが導入されています。
また、建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化により、成績評点の加減点が行われるモデル工事が実施され、給与の向上に寄与しています。
・休暇
休暇面では、週休2日を確保するための取り組みが強化され、工期設定や経費補正が行われています。2024年4月からの時間外労働の上限規制に対応するため、適正な工期設定が指針として策定され、計画的な環境整備が進んでいます。
・希望
希望面では、i-Constructionの推進により、建設現場の生産性向上を目指すと共に、ICT施工を推進し、総合的な評価や成績評定が可能となっています。
また、中長期的な工事発注の見直しや、建設業界のリブランディングに向けた提言が行われ、誇りや魅力を感じられる職場環境の構築が進められています。
新3Kの実現に向けた取り組みとは?
国は新3Kを実現するために様々な取り組みを行っています。主な取り組みは以下の通りです。
これらの取り組みによって、新3K「給料がよい」「休暇が取れる」「希望がもてる」に加えて、建設業界が魅力的で働きがいのある職場へと変革し、次世代の担い手を確保することを目指しています。
◇建設DX
生産性向上と建設DXでは、新しい技術やデジタル技術を導入して業務の効率化を図り、長時間労働や人手不足といった問題に対応しています。
例えば、3次元データを活用した土木工事やBIM/CIMを導入し、工事のシミュレーションや作業効率の向上、安全性の確保に取り組んでいます。
また、5Gを活用した無人化施工やドローンによる点検作業で、危険な作業を減らし、より安全な作業環境を整えています。
◇働き方改革
働き方改革の一環として、AIを活用した労働管理システムやWEB会議の導入により、従業員の健康管理や労働環境の改善が進められています。これにより、遠隔での打ち合わせや施工状況の確認が可能となり、現場での働き方が柔軟になっています。
◇人材育成
人材育成では、VR技術を活用した教育プログラムによって、安全意識の向上や事故防止が図られています。また、高校や大学でのキャリア教育を通じて、建設業界の魅力を伝え、新たな人材を育成する取り組みが進められています。
◇次世代の確保
担い手の確保に向けては、建設業の「かっこいい」側面を強調する活動が行われています。自然災害時の緊急対応など、地域に貢献する建設業の姿をSNSやメディアを通じて発信し、業界への関心を高めています。さらに、女性が働きやすい環境を整えるために、トイレや更衣室、作業着の改善も行われています。
建設業界は深刻な人材不足に直面しています。少子高齢化や若者の業界離れ、過酷な労働環境が原因で、現場の人手が不足し、プロジェクトの遅延やコスト増加が頻発しています。
特に「3K」(きつい、汚い、危険)や「6K」(3Kに加えて帰れない、厳しい、給料が安い)というイメージが若者に敬遠される一因となっており、業界全体の高齢化も進んでいます。給与が低く、休暇も取りづらいため、若手の人材確保が難しくなっています。
これに対抗するため、建設業界では「新3K」(給料がよい、休暇が取れる、希望がもてる)を目指し、改善に取り組んでいます。具体的には、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化や、働き方改革での労働環境の見直しが進められています。
AIやVR技術を活用した教育プログラム、柔軟な働き方の推進、女性の働きやすい環境整備などが行われています。また、建設業の魅力を発信し、地域貢献や安全性向上に努めることで、次世代の担い手確保を目指しています。